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2022年9月定例会本会議

もりづくり

「山の信州」は霞の中

○議長(丸山栄一 君)次に、百瀬智之議員。

      〔13番百瀬智之君登壇〕

◆13番(百瀬智之 君)今回は、里山のにぎわい創出について、主に観光政策を切り口にしてお尋ねしてまいります。

 少し昔のこととなりますが、遡るのは2017年、長野県観光機構は、信州デスティネーションキャンペーンに伴って、信州DCサイト、大手検索サイトヤフーの検索履歴等を活用してデジタルマーケティング調査を実施したと承知しております。

 そこで明らかになったことは、一つには、DC期間中における検索動向の把握、例えば、DC期間中に「長野・観光」と二つのワードを連ねて検索した人がその直前や直後にどのような検索をしているかというようなことが判明いたしました。

 その結果は、例えば、同時期に「山梨・観光」と検索した人の直前検索では、山梨・ブドウ狩り、富士急ハイランド、河口湖・観光というようなワードがトップテンを飾るのに対して、「長野・観光」と検索した人の直前検索トップテンには、山梨・観光、新潟・観光、岐阜・観光というワードが並び、10番台からようやく松本城や善光寺というワードが見られるようになります。

 何が言いたいかというと、山梨県に行こうとしている人は、山梨県に行けばブドウ狩りで食のコンテンツが楽しめる、富士急ハイランドでレジャー施設が充実している、あるいは河口湖畔でゆっくりできるという山梨県内で何ができるかを検索時点で具体的に想起できるのに対して、長野県ではそれが曖昧で、観光客は来県前から隣県で何ができるかを割と必死に探していて、知らず知らずのうちに本県がハンデを背負って来客を迎えていることが浮き彫りになっています。

 頼みの松本城や善光寺だけでは人々を一日中そこに滞在させたり観光客を宿泊させるには足りず、それらを補うことが期待される温泉コンテンツは隣県群馬の後塵を拝し、食のコンテンツも隣県に競り負けている状況で、総じて本県の具体想起は隣県の後手を踏んでいて、ぼんやりとした人気はありながらも、魅力が曖昧なため、比較され、強みの明確な他県に興味関心が流れ、本県に誘導できていない。結果、感度が高い女性や若者が来なくなってきている。そんなことをデータは示しています。

 では、どうすればいいのかと考えたときに、しっかり魅力を編集して、その価値向上に重点的に投資していく必要があるのではないでしょうか。というのは、同じくこんなデータも出ています。簡単に申し上げますと、まず、DCサイトのカテゴリー別のアクセスを調べると、イベント情報やアクティビティーというカテゴリーを上回ったのは、山の信州というカテゴリーでした。同じくDCサイトのアクセスを今度はページ別に調べると、大自然で遊ぶとか信州の歴史文化に触れるというページを抑えたのは、信州の大自然に癒されるというページでありました。

 つまり、本県に関心を持つ人の多くが、シンプルに山の信州に癒されたいと思っていて、松本城もいいし、温泉もいいし、そばもいいけれども、私たちが毎日それらに通っているわけではないことと同様に、観光客の方々も、それらに触れながらのんびりと山に囲まれた暮らしをしてみたい。そういう日常を体感してみたい。でも、その受皿が整っていない。そして、何より地域住民自らが山に癒される場所を持っているようで持てていない。したがって魅力を伝え切れていない。そんなことを示唆していたのではないかと考察します。

 そこで、お尋ねいたします。

 まず、リアルな世界での県内へのいざないとして、先日、久しぶりに銀座NAGANOを訪れてみました。現在、約1,600の商品がひしめくように陳列され、77市町村のあれもこれもとPRしていただいていますが、それがかえって銀座を歩く人たちの目を背けることにはなっていないでしょうか。もっと陳列棚とディスプレーを整理して見栄えをよくしていただきたいということを要望しておきたいと思います。

 そして、それらを踏まえてのデジタルは、今後は来訪者に対するプッシュ型の通知がますます重要になってくると考えます。LINE等を活用したプッシュ型の事業展開とデジタルプロモーション全般の進捗を伺い、あわせて、大規模な観光イベントが続いた今年はどのようなマーケティング調査、データ分析がなされたのでしょうか。観光部長に伺います。

 また、山のコンテンツとしては、まず、移動に関して、機動力がある自転車道の開発整備はどうなっているでしょうか。

 最近では、かつての森林作業道を新たにマウンテンバイクロードとして復活させ、林業再生を視野に入れた観光コンテンツ事業が生まれているとも聞きます。とすると、長野県のジャパンアルプスサイクリング事業にも派生的な可能性が眠っていると思いますから、ルート設定に時間がかかっているこちらの事業の見通しを伺います。

 さらに、山での長期滞在を見据えたときに、ハイクラス、ミドルクラスの宿泊者が長期滞在できる仕掛けが弱いです。軽井沢を見てみれば明らかなように、特に富裕層に関しては、観光消費額の平均単価が高いということはもちろんのこと、そこで認められたブランド、流行したトレンドは大衆の憧れとなり、全ての人に波及します。

 懸念しているのは、県内ではそれらの役目を軽井沢に頼り過ぎてしまっていることで、もっと県内全域で展開していただきたく、ハイクラス、ミドルクラスの宿泊者をターゲットとしてどのような取組をしているのか。以上、観光部長の見解を求めます。

 次に、林務部関係について、まず、ベースの部分で、森林所有者の特定と森林管理を進める森林経営管理制度の進捗はどのようになっているでしょうか。

 そして、「山の信州」と言ったときに、3,000メートル級のがちんこ登山を想起する人は少なくありませんが、これからは、環境、健康、癒しを目的に気軽に親しめる里山という思考が非常に大事になると思います。昨今は、長野県の森林サービス産業の取組が国から注目されていると聞きますから、その期待は大きいです。

 特に、まず地域住民が気軽に里山に足を運べる拠点づくりにはぜひとも重点を置いていただき、例えば、中信地区にとって、小谷村と木曽にある森林セラピー基地のみでは、松本地域の住民からすると、そうはいってもどちらもなかなか距離があり、定期的に足を運べるものではありません。もっと身近にこれらに準ずる里山スポットを設定して県民の憩いの場を増やす取組をしてはいかがでしょうか。

 新たな拠点づくりの在り方と、林務部としては地域住民や観光客にどのような里山コンテンツを提供できると考えているか。以上を林務部長に伺います。

 最後に、今回のデジタルマーケティング調査によると、山から神社仏閣、温泉に至るまで、県内の観光スポットを個別に見ると、やはり女性と若者の興味関心が比較的薄いということが明らかになっています。観光客の視点と同時に、まずは現場で女性や若者の視点をもっと組み込んでいく必要性を感じます。

 そこで、広く一般的に、このたびめでたく4期目を迎えられた知事が女性や若者のニーズを今後どのように酌んでいくおつもりなのか改めて伺い、今回の主題である信州の山づくりにおいては、観光部と林務部に期待することは何なのか見解を求め、今回の一切の質問といたします。

      〔観光部長渡辺高秀君登壇〕

◎観光部長(渡辺高秀 君)私には大きく4点のお尋ねをいただいております。

 まず、プッシュ型の事業展開とデジタルプロモーション全般の進捗についてでございます。

 プッシュ型の事業展開としては、観光機構と連携し、メールマガジンによる季節やターゲット層を意識したコンテンツの紹介、ツイッターやインスタグラムを活用し、例えば、桜、紅葉、食など旬の情報を投稿、こういった媒体の特性を生かした情報発信を行っているところでございます。

 また、今年度は、長野県公式情報サイト「Go NAGANO」と連動した「ながのファンコミュニティーサイト」を設け、今後登録会員の属性などに応じた情報発信に取り組んでまいります。

 こうした取組を進める中、インスタグラムにおいては、自治体観光情報の中でフォロワー数が全国第3位となるなど成果も上がってきており、引き続き工夫を凝らし、効果的なデジタルプロモーションを推進してまいります。

 次に、大型イベント等の実施に伴いどのようなデータ分析が実施されたかとのお尋ねでございます。

 宿泊旅行統計調査によりますと、大型イベント等が実施されました本年4月から6月の県内宿泊者数は約310万人と、コロナ前の2019年同期と比較し76%程度まで回復しており、全国の同期比を5ポイント余り上回っている状況でございます。

 また、公式観光サイト「Go NAGANO」のアクセス数からは、本年4月から6月の閲覧者数は約96万件、前年同期比約1.8倍に増加。閲覧者の居住地別では、首都圏約57%、県内13%、中京圏9%で、前年同期と比較すると首都圏が約1.2倍に増加しているなどの状況が見られるところでございます。

 民間会社の調査結果でも、本年6月の状況は、御開帳などの開催周辺地域をはじめ、各地域でコロナ前を上回る入り込み状況となっており、こうした大型イベント等の波及効果や首都圏からの旅行者の増加が宿泊者数等に反映されたと考えているところでございます。

 次に、ジャパンアルプスサイクリングロードのルート設定の見通しについてでございます。これまで、シドニーオリンピック、マウンテンバイク日本代表である鈴木雷太氏を代表とするジャパンアルプスサイクリングプロジェクトを中心にルート案を作成し、令和元年度から10広域ごとの道路管理者や警察等で構成する検討会議でルートの検討を重ねてきたところでございます。

 令和3年度までに、諏訪、上伊那、北信の3地域のルートが確定し、建設部等において案内看板や路面標示の整備を進めるとともに、サイクリングガイドの講習会などソフト、ハードの両面で整理を進めてきているところでございます。また、残る地域についても、現在コースの試走等により安全性等の検証や国等との調整を行っており、今年度中に全ルートが確定できるよう取り組んでいるところでございます。

 最後に、ハイクラス、ミドルクラスをターゲットとしてどのような取組をしているかとのお尋ねでございます。

 県では、これまで、市町村や観光機構等と連携し、信州安全・安心な宿魅力向上事業による宿泊施設のグレードアップ支援、ライチョウ観察など長野県でしか体験できない特別感のある旅行商品の造成、秋の観光プロモーションでは、上質な食をテーマにしたワンランク上の旅の発信、観光庁の上質な宿泊施設の開発促進事業によるホテル誘致における地元自治体との連携など、受入れ環境整備、プロモーション等を実施してきているところでございます。

 以上でございます。

      〔林務部長吉沢正君登壇〕

◎林務部長(吉沢正 君)里山のにぎわい創出に関連し3点御質問をいただきました。

 まず、森林経営管理制度の進捗についてです。

 この制度は、森林所有者による管理がされてこなかった森林について、市町村が所有者の特定や意向確認を行いながら、所有者の委託を受けて直接経営管理あるいは林業経営者に再委託することにより森林管理の適正化と林業経営の効率化を促進する制度です。

 県内の市町村におけます進捗については、森林所有者の特定につながります意向調査を実施している市町村が本年3月時点で52、それから、市町村の森林管理につながる経営管理権を取得した市町村が本年9月時点で14となっております。

 次に、地域住民が里山に足を運べる拠点づくりについてです。

 県では、第3期森林づくり県民税の取組を通じて、全国最多10か所の森林セラピー基地等への支援や、地域が主体となり里山を利用する里山整備利用地域への支援などを行ってまいりました。

 御指摘のとおり、今後は、レクリエーションや健康づくりなどより多くの皆様が楽しんでいただける拠点が広がるように、里山がより親しまれ、広く利用される仕組みづくりでありますとか、観光、健康、環境教育といった視点での森林の多面的な利活用につきまして次期の森林づくり県民税も活用した支援策を検討してまいります。

 3点目、地域住民や観光客に提供できる里山コンテンツについてですが、自然との触れ合いや地方回帰の流れが加速し、森林への利活用への期待も高まっているものと認識しております。

 そうした中で、里山を楽しむコンテンツとしては、観光面からは、グランピングなどのほかにも、例えば、山村の暮らしを身近に感じながら歩くフットパスであるとか、林間で爽快感を味わえるマウンテンバイクなどもございます。また、観光面以外でも、ワーケーションなど自然環境を感じる働く場としての利用であるとか、地域の子供たちのための教育利用、あるいは身近な里山を利用できる森のオーナー制度など、地域の特徴を生かし、多様なニーズに応える形で様々なサービスの提供が可能だと考えております。

 以上です。

      〔知事阿部守一君登壇〕

◎知事(阿部守一 君)私には2点御質問を頂戴いたしました。

 まず、若者、女性のニーズをどう酌み取っていくのかという御質問であります。

 今回、選挙におきまして、女性や若者から選ばれる県づくりということを強く訴えてまいりました。女性、若者の声をどう受け止め、その声をどう政策に反映させていくかということについては私としても非常に重要だというふうに思っております。

 私の場合は、普通に仕事をしていると、どうしても一定の年齢以上の男性と会話をする機会が非常に多いです。これは、組織の中でも県民の皆様方との関係でもそういうことになっていますので、どうしてもそういう皆さんの意見が私の頭の中にどんどんインプットされてしまっている。若い人や女性の声がなかなか私のところに入ってこない、届いていないということをまずは私自身がしっかり意識しなければいけないというふうに思っています。

 その上で、例えば総合5か年計画の策定に当たりましても、県外在住の人たちも含めて若い人たちと意見交換をいたしましたし、また、子育て世代の方々とも意見交換をいたしました。

 そうした中で、今後の取組として私が重要だというふうに思っておりますことは、一つは、これは子育て世代の方々との意見交換の中で感じたことですが、具体的に何をしてほしいということ以前に、まずは子育て世代の人たちがこういう社会的な課題、あるいは行政との問題についてしっかり語り合えるような場がほとんどないのでもっと増やしてもらいたいという声が複数の方から出ておりました。

 また、県外の若者と話をさせていただいたときに言われたことは、県外の若者ではありますが、長野県、とりわけ辰野町と縁が深い若者が多かったわけですけれども、どうして辰野町にみんな来るのか、どうして町の活性化に一緒になって取り組んでくれているのかという観点でお話を聞くと、私たちの意見を本気で取り入れてくれるからと。要は、形だけ意見交換をするとか対話をするということではなくて、本当に地域を一緒につくってもらいたい、そういうパートナーとして意識をしてもらえている。そして、自分たちが発言したり行動したりすることが本当に地域に頼りにされているという意識を持っているから町の活性化に協力しているのだというお話がありました。

 これらの話は、これから私たちが女性や若者の皆様方の声を聴いていく上で非常に重要な視点だというふうに思います。私自身、これから県民対話集会を行っていきたいと思いますが、私だけではなく、県組織全体が、若者、女性の声にまずはしっかり耳を傾ける。また、そうした若者や女性自身がお互いに話し合うことができるような場をつくっていくことが重要だと思います。

 その一方で、とかく行政にありがちなのは、聞きっ放しで終わってしまうということでありますが、そうしたことが繰り返されると、もう誰も意見を言ってくれなくなってしまうというふうに思いますので、しっかり若者、女性の声を反映して、小さなことでもしっかりと変えていく、そうした姿勢で取り組んでいくということが重要だというふうに思います。私がここで答弁をしているのを各部長も各職員も聞いてくれていると思いますので、県組織全体でそうしたことを徹底して取り組んでいきたいというふうに思っております。

 それから、信州の山の魅力づくりにおける観光部、林務部への期待という御質問であります。

 御質問にありましたように、観光客が本県を選ぶ理由がなかなか明確ではないというのは本県観光にとっての大きな課題だというふうに思っております。私は、日本百名山の数が全国1位、あるいは森林面積が全国3位、そして国際的なスノーリゾート地を有しているということで、全国トップレベルの山岳観光県だというふうに自負をしておりますが、まだまだ長野県の特色、強みを十分に生かし切れていない部分があるというふうに思います。

 今後、御指摘がありましたように、豊かな自然や里山、森林資源、こうしたことを生かした観光振興、そして長野県としての観光のコンセプトをより明確にして取組を進めていくということが重要だと思っております。

 観光部には、まずは世界水準の山岳高原観光地づくりということを言ってきておりますので、世界の観光地に遜色がないように、例えばWi-Fiの整備やキャッシュレス化の推進など受入れ環境をしっかり進めてもらいたいというふうに思っております。

 また、今はアウトドアブームであり、これはまさに長野県にとって追い風であります。里山を含めた山のハイキングコースやキャンプの魅力をより高めていく、そしてしっかり発信していくということに一層注力していくことが重要だというふうに考えております。

 また、林務部には、県民の皆様方はもとより、観光客の方々にも気軽に親しみ、楽しんでいただける森林づくりを進めてもらいたいというふうに思いますが、一方で、生物の多様性の維持存続など、多面的な森林の役割を視野に入れながら、より森林の魅力を引き出していってもらいたいというふうに考えております。

 こうした取組を進めるためには、観光部、林務部、両部の協力関係が重要だということはもとより、県庁内各部署とも連携して取組を進めていくということが重要だというふうに思っています。観光部には、県庁各部が参画しております県の観光戦略推進本部の事務局であるということをしっかり念頭に置いて施策を進めてもらいたいというふうに思いますし、また、林務部には、観光のみならず環境、防災、様々な機能を有する森林を所管しているということを十分意識して施策を進めていっていただきたいというふうに考えております。

 以上です。